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起立性調節障害|漢方症例

お子様のお悩み

起立性調節障害とは

 

起立性調節障害とは、立ち上がったときの循環調節が十分に働かなくなることで、さまざまな症状を引き起こす自律神経機能の障害です。

主に小学校高学年から思春期にかけて発症することが多く、小児・思春期にみられる代表的な自律神経系の疾患の一つとされています。

人が立ち上がると、重力の影響によって血液の一部が下半身に移動します。通常は自律神経(交感神経)が働き、血管を収縮させたり心拍数を増やしたりすることで血圧を維持し、脳への血流を保っています。しかし起立性調節障害では、この循環調節が十分に機能しないため、立位時に脳への血流が一時的に低下し、さまざまな症状が現れます。

主な症状としては、立ちくらみやめまい、動悸、頭痛、倦怠感、朝起きられない、午前中に体調が悪いなどが挙げられます。また、失神や気分不良、集中力の低下などを伴うこともあります。症状は朝に強く、午後になると比較的軽くなる傾向があり、日によって体調の変動が大きいことも特徴です。

起立性調節障害は単一の病態ではなく、起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群(POTS)、血管迷走神経反射など、いくつかのタイプに分類されます。背景には、思春期の身体の急速な成長に伴う循環調節機構の未熟さ、睡眠リズムの乱れ、精神的ストレス、体力低下などが関与すると考えられています。

治療は生活習慣の改善を基本とし、症状の程度に応じて薬物療法が行わます。
薬物療法としては、血圧を維持しやすくする昇圧薬(ミドドリンなど)、心拍数の過剰な上昇を抑えるβ遮断薬(プロプラノロールなど)、体内の水分量を調整する抗利尿ホルモン製剤(デスモプレシンなど)などが用いられることがあります。
また、不安や自律神経の過敏性が強い場合には、抗不安薬や睡眠薬、場合によっては抗うつ薬や非定型抗精神病薬などが処方されるケースもあります。
しかし実際には、これらの治療を行っても症状の改善が十分にみられないケースも少なくありません。
西洋薬に限定した薬物療法では十分な改善がみられないケースにおいても、漢方治療が有効となることがあります。

起立性調節障害と漢方治療

漢方治療では、起立性調節障害にみられる循環調節の乱れを重要な要因の一つとして捉えます。起立性調節障害では、起立時に血液が下半身へ移動しやすくなる一方で、血管収縮や循環血液量の調節が十分に働かないため、血液の分布が不安定になりやすい状態がみられます。

実際の臨床でも、めまいや頭重感、強い倦怠感などを訴える患者では、血液や水分の巡りが滞りやすい状態が背景にあると考えられるケースが少なくありません。
当薬局に相談に来られる患者さまの中でも、こうした体内の巡りの乱れが関係していると考えられる例は少なくない印象があります。

そのため漢方治療では、体内の循環を整え、血液や水分の巡りを安定させることを治療の柱として考えます。具体的には、水分代謝を整えてめまいや頭重感を軽減する処方、胃腸機能を高めて全身の代謝や循環を支える処方、さらに精神的緊張を和らげることで自律神経の過敏な反応を落ち着かせる処方などを、体質や症状に応じて選択していきます。

起立性調節障害は、同じ病名であっても症状の現れ方や体質には個人差が大きく、背景にある身体の状態も一人ひとり異なります。朝の起床困難が中心となる場合もあれば、めまいや倦怠感、頭痛、食欲低下などが強く現れる場合もあり、症状の組み合わせもさまざまです。

そのため漢方治療では、症状の経過や体調の変化を丁寧に確認しながら処方を調整し、自律神経の働きや体内の循環バランスを少しずつ整えていくことを目標とします。

このように、症状だけに目を向けるのではなく、体内の巡りや体調の基盤そのものを整えていくことが、起立性調節障害に対する漢方治療の大きな特徴といえます。

起立性調節障害|漢方症例①

13歳

約1年前より朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感などの症状で登校困難が続いていた。
総合病院では起立性調節障害と診断され、メトリジンおよび複数の漢方エキス剤が処方されるも十分な改善は得られなかった。
遠方の相談漢方にもかかったが状態に変わりはない。

朝起きられない状態が続き、母親の声掛けで目は覚めるものの身体が起こせず、立位時に強いふらつきと悪心を認める。
午前中は症状が強く、午後〜夕方にかけて体調が安定する日内変動が明確である。
味覚低下と食欲不振は朝に顕著で、夕食時には味がわかり「美味しい」と感じ、食後に再び空腹感が出ることもある。そして、冷飲を好む傾向がある。

思春期に多い自律神経の不安定化を背景に、いわゆる“フクロウ型体質”の典型像と判断した。
フクロウ型は 朝の低活動性・易疲労・めまい・頭重感・睡眠リズムの乱れ を呈し、起立性調節障害の症状と重なる点が多い。

これらの体質像から 苓桂剤を中心とした方剤 を選択した。
煎じ薬と粉状の薬(エキス剤)とでは、その効果に大きな差があるため、迷わず煎じ薬を処方した。

服用開始2日目より起床時倦怠感に軽減を認め、2週間後の症状は約半減を確認した。
方剤を微調整しさらに2週間経過した時点で、起床時のふらつき・倦怠感はほぼ消失し、通常時刻での起床と連日の登校が可能となった。

現在も煎じ薬を継続し、良好な状態を保持している。

起立性調節障害|漢方症例②

15歳 男性

小学6年生で発症し、その後は改善する時期と悪化する時期を繰り返していた。
症状は頭痛、吐き気、倦怠感、腹痛、入眠困難、咽頭部の痛み、下肢のこむら返り、蕁麻疹など多岐にわたり、思春期特有の精神的な不安も併存していた。
これまで薬物療法の経験はない。

飲み物の好みを確認すると、冷たいオレンジジュースや牛乳を特に好み、一度に多量に飲む傾向があり、軽度のむくみも認められた。これらの所見から、体内の水分バランスが崩れやすい状態が背景にあると考えられた。

まず、体の水分バランスを整えることを目的に、苓桂剤を基軸とした煎じ薬を調合した。
起立性調節障害の症例では煎じ薬が効果を示すことが多い経験があり、今回も同様に選択した。
服用開始から10日ほどで、起床時の倦怠感が軽減し、目覚めも良くなった。頭痛は残るものの軽度で、体調全体は改善傾向にあった。朝食は依然として無理やり摂っているものの、下肢のこむら返りが気になるようになった。この時点での自己評価は10段階中6〜7程度であった。

次に、下肢のこむら返りや情緒面の不安定さを改善する目的で、肝経に働きかける生薬を追加し、方剤を微調整した。2週間後には、頭痛や起床時の倦怠感はほとんど気にならない程度となり、目覚めも良好となった。ただし、咽頭の違和感や蕁麻疹が残存したため、さらに調整を加えたところ、咽頭症状は解消し、頭痛も消失した。全身状態は安定し、自己評価は2程度で落ち着いた。

現在は新年度開始以降、一度も休むことなく登校でき、生活リズムも安定している。体の水分バランスの改善を中心に、必要に応じて血流や自律神経への調整を加えることで、多様な症状が順次落ち着いた症例である。

 

起立性調節障害に用いる漢方

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
五苓散(ごれいさん)
桂枝加桂湯(けいしかけいとう)
苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)
茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)
茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
連珠飲(れんじゅういん)
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
九味檳榔湯(くみびんろうとう)
六君子湯(りっくんしとう)
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
など

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