症例①
７0代　女性
耳下腺がん手術後の神経疼痛に悩まされている。
半年前に手術をして、無事に腫瘍摘出は済んだが、左顔面から頭部にかけて神経疼痛を発症して、タリージェを中心とした薬物療法を行っているが経過が思わしくない。
副作用で眠気やふらつき、意識がぼんやりしてしまい、漢方で何とかならないかと相談にいらした。
すでに五苓散や附子末の処方も試みたが、思った程の効果はなかったという。
手術が広範囲に及んでいるため、傷跡周囲の神経損傷や組織の癒着により慢性的な痛みや感覚異常を生じている。
胸脇苦満、心下支結などが顕著にみられたので柴胡剤を選定し、肌の突っ張る感覚の訴えから、血流改善を考慮しながら附子剤を２週間服用していただいた。
続いて、頭部の鬱熱を清して、痛みをとる方剤（煎じ薬）を選定した。
三叉神経痛や頭部の帯状疱疹後遺症による神経痛などに応用して効果を認めている方剤である。
漢方薬を開始してから、痛みや感覚異常のスケールは開始前の１０から３程度まで軽減した。危惧した胃腸への負担もなかったという。
今後は、粉薬に切り替えて症状の経過をみていく。
始めてお会いした時の悲壮感はなく、明るい笑顔を取り戻し、とても活動的な日々を送っている。


▢神経痛に用いる漢方
葛根湯（かっこんとう）
帰耆建中湯（きぎけんちゅうとう）
五苓散（ごれいさん）
桂枝加苓朮附湯（けいしかりょうじゅつぶとう）
五積散（ごしゃくさん）
清上蠲痛湯（せいじょうけんつうとう）
当帰四逆加呉茱萸生姜湯（とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう）
疎経活血湯（そけいかっけつとう）
柴胡疎肝湯（さいこそかんとう）
清湿化痰湯（せいしつけたんとう）
麻黄附子細辛湯（まおうぶしさいしんとう）
など