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ご相談事例

反芻思考 ― 悩みが頭から離れない|漢方症例

自律神経系の不調

50代
職場環境が変わってから、不安が強くなったことをきっかけに来局された。
お話を伺うと、一番つらかったのは、不安そのものではなかった。
一つ気になる出来事があると、「あの時の言い方は良くなかったのではないか」「相手を嫌な気持ちにさせてしまったのではないか」と、同じことを何日も繰り返し考えてしまう。考えても答えは出ないと分かっている。それでも気が付くと、また同じことを考えている。

もともと真面目で責任感が強く、仕事にも誠実に向き合ってきた。自分の言動を振り返ることは以前からあったという。しかし、今回の状態はそれとは明らかに違っていた。一度考え始めると、自分の意思では止めることができず、そのことばかりが頭の中を占めてしまう。仕事中も帰宅後も、その繰り返しだった。

一方で、身体にも変化が現れていた。首や肩のこりは強く、胸が詰まるような感覚や顔のほてりも繰り返していた。考え込んでいる時ほど身体はこわばり、身体がつらい日はさらに考え込んでしまう。そんな状態が続いていた。

最近、このようなご相談は少なくない。「考え過ぎる自分が悪い」「もっと気持ちを切り替えなければ」と、自分を責めている方も多い。
しかし、このような状態では、性格や意志の弱さが問題なのではない。脳が同じ考えを繰り返しやすい状態に陥っているため、止めたいと思っても、自分の意志だけでは切り替えることが難しくなっている。

このような状態は、反芻思考(はんすうしこう)と呼ばれている。「反芻」とは、牛などが一度飲み込んだ食べ物を再び口に戻して噛み直すことをいう。つまり、新しいことを考えているのではなく、同じ出来事を何度も頭の中で繰り返してしまう状態を表した言葉である。

本症例で特徴的だったのは、身体が緊張している時ほど、考えも止まりにくくなっていたことである。逆に、身体が少し楽な日は「今日はあまり気になりませんでした」と話されることもあった。性格だけでは説明できず、身体の状態も深く関わっているように感じられた。

そこで今回は、不安という訴えだけではなく、身体に現れている変化にも目を向けながら煎じ薬を調製した。
服用を続けると、まず首や肩のこりが軽くなり、「身体が楽になってきました」と話されるようになった。
その頃から、「考えてしまうことはありますが、前ほど何日も引きずらなくなりました」「途中で気持ちを切り替えられる日が増えてきました」と変化がみられた。胸のつかえや顔のほてりも徐々に軽減し、仕事中も一つの出来事に意識を奪われ続けることは少なくなっていった。

現在は症状も安定し、必要時のみ頓服的に服用を継続されている。

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