症例①
50代
3カ月ほど前から症状に悩まされている。
現在、心療内科で睡眠薬の処方を受けているが不安定な状態が続いている。睡眠薬を継続的に服用することにも抵抗感があり相談にいらした。
日中、口の乾きなど何か気になり始めると落ち着かず、居ても立っても居られない心持ちになり、咄嗟に外出することが頻繁にある。そして、夜間に同様の症状が現れると物音などが気になり、寝付けなくなってしまうのだという。
漢方では「煩驚」と呼ばれる病態が存在する。
神経が過敏になり物に驚きやすく過度の緊張状態に陥った状態のことである。
正にこの患者さまの証す姿であった。
迷わず方剤を選定し、煎じ薬を調合した。
興奮状態に用いる際には、方向性を鋭くするために、ある方剤を組み合わせる必要が求められる場合がある。
事前に、ある程度苦みのある漢方薬になることをお伝えし、承諾をいただいた。
2週間後、具合を伺うと気持ちが楽になったとお話された。
さほど味の抵抗もなく飲むことが出来たという。
眠れない日も少なくなっており、確実に効果の実感をお持ちになっている様子だ。
方剤の調整を行い、続けて様子をみていただいた。
漢方薬を飲み始めて、1カ月経過する頃には「煩驚」の状態はなく、睡眠薬を必要とする日は1カ月に1~2回程度となっていた。
始めてお会いしたときの焦燥感はなく、肩の荷が下りた様なご様子で、優しくお話をされる姿がとても印象的だ。
嬉しい気持ちで心がいっぱいになった。