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形ではなく、本質を受け継ぐ ― 日本漢方の本質

2026.08.01 思い

伊勢神宮では、二十年に一度、式年遷宮が行われます。
古い社殿の隣に、同じ姿の新しい社殿を建て、御祭神をお遷しする。
その営みは、千年以上にわたって繰り返されてきました。

姿だけを見れば、社殿は二十年ごとに新しくなります。最初に造られた建物は、もう残っていません。

形あるものを残すことを本物の条件とするなら、本物はとうに失われたことになります。
しかし、姿は新しくなっても、その存在は変わることなく受け継がれています。そこには、本物と写しという単純な区別はありません。
受け継がれているのは、社殿そのものではないからです。
技であり、祈りであり、その営みを支える精神です。
その価値は、形そのものではなく、本質にあるのだと思います。

私は、ここに日本文化の姿があると考えています。
そして、漢方もまた同じです。
漢方は日本へ伝わり、この国の風土や暮らし、そして先人たちの臨床経験の中で磨かれ、独自の発展を遂げました。

先人たちは古典をただ保存したのではありません。
古典を読み、処方を試し、その経験を再び古典に照らして確かめることを、繰り返してきました。そうして、日本漢方は今日まで受け継がれてきたのです。

漢方は、理論だけで完成する医学ではありません。
現代医学によって病態を正しく理解することは、治療を考えるための大切な土台です。
そのうえで、患者さまがどのような経過をたどり、処方にどのような反応を示すのかを丁寧に見つめることが欠かせません。

病態を理解すること。
古典に学ぶこと。
患者さまのお身体から学ぶこと。
この三つを切り離すことはできません。
私は、現代医学によって明らかになった病態や生理機能を踏まえて古典を読み直すことで、その理解はさらに深まるのではないかと考えています。

古典には、先人たちが積み重ねた貴重な臨床経験が詰まっています。
だからこそ、私は学び続ける価値があるのだと思います。
そこに書かれたことを、現代医学と実際の臨床を通して理解し直すことで、古典は昔の書物ではなく、今もなお臨床に生きる医学であり続けます。
私にとって、現代医学を取り入れることは、古典を壊すことではありません。
むしろ、古典をより深く理解するための一つの手がかりになります。
受け継ぐべきものは、形そのものではなく、その本質なのだと思います。

少し堅苦しい話になってしまいました。
普段はこんなことを考えながら、患者さまと向き合っています。 これからも古典に学び、患者さまのお身体に学び、一人ひとりに合った漢方をご提案できるよう努めていきたいと思います。

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